#111009環境基底完全な黒ではなく深みのある闇。光が溶けて消える終着点。追補録(エピローグ)
開発の対話と、残しておきたかった思想
仕様書という枠組みを超えて、このデザインシステムがどのような試行錯誤と対話を経て形作られたのか。その背景にある動機と、ものづくりへの思いの記録。
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01
直感から始まる言葉の強さ
デザインの体系を考え始めるとき、最初はつい「電紋」や「透光紋」といった小難しい言葉や、既存の表現に頼ろうとしていました。しかし、実際にゲームを開発し、画面を作る現場に立つと、そうした言葉はどこか堅苦しく、手触り感が薄いと感じていました。
ふと思い浮かんだのは、子どもの頃から親しまれている「ピカチュウ」のような、直感的なネーミングの発想でした。「ピカッと光る」「ネズミの連想」、そしてあの語呂の良さ。理屈をこね回すのではなく、誰もが一瞬でイメージできるシンプルな結びつきから生まれ、やがて世界共通の呼び名として定着していった言葉の力です。
「組子という構造(Kumi)」と、「光るという現象(Glow)」。この2つを素直に合わせた「KumiGlow」という響きが決まったとき、頭の中で散らばっていたピースが一気に引き締まりました。
「背景はKumiGlow(クミグロー)で、決定時にKumiPulse(クミパル)を走らせて」。
現場で軽やかに交わされるこの0.1秒の直感的な言葉こそが、本当に役立つ共通言語になると確信しています。 -
02
自分自身の「困惑」から生まれた定義
世の中を見渡すと、「和」と「サイバー」を組み合わせた表現はたくさんあります。しかし、いざ自分が本格的なゲームUIや画面を作ろうとしたとき、「具体的にどうすれば安っぽくならず、本物の美しさを再現できるのか?」という指針がどこにもないことに気づきました。
鳥居や漢字を配置するのもひとつの表現ですが、自分が作りたかったのはもっと根本的な、日本の職人がミリ単位で木を組んできた「構造そのものの美しさ」でした。足し算で飾り立てるのではなく、骨格そのものに光を宿らせること。自分が開発の中で迷い、試行錯誤し、必要に迫られたからこそ、この「KumiGlow」というルールを一つひとつ言語化していくことになりました。
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03
3D空間への展開と「軸」の規律
ゲームや最新のクリエイティブ環境において、3D空間へのアプローチは欠かせないものです。KumiGlowも、立体的な空間やカメラワークの中で機能していくことを想定しています。
ただし、そのときに意識したいのが「幾何学の軸を崩さない」ということです。パースがついたり空間に配置されたりしても、組子本来の持つ比率や対称性という「数理的な規律」が保たれているからこそ、そのオブジェクトは美しい佇まいを維持できます。立体として空間に存在させながらも、骨格としての誠実さを手放さない。そのバランスを探るための基準として、この規律を置いています。
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04
情報を引き立たせるための光の配分
今回のWeb画面では、左側に文字を置き、右下に光を溜めるというレイアウトを試みました。しかし、これは決して「右下が明るくなければいけない」という固定ルールではありません。
本質は、「画面全体を均一に光らせるのではなく、文字や情報のために闇を残し、光をどこかへ心地よく逃がしてあげること」です。Photoshopやコードの機能で言えばグラデーションやマスクに近い処理かもしれません。しかし、「単に色を混ぜる」という作業ではなく、「人が情報を読むための静けさと、光の余韻をどう同居させるか」という意識を持つこと。その意図を共有するための合言葉として、「組余白」という視点を提案しています。
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05
現場の使い手に委ねる余白
「組の間」にしても、最初は「KuminoMa」という呼び方も考えました。けれど、世界中のクリエイターが使うことを想像したとき、助詞を取り払った「Kumi-Ma」のほうがシンプルで馴染みやすいだろうという結論に至りました。
もちろん、日本の現場で「組の間(くみのま)」と呼んでも、「クミマ」と呼んでも、それは使う人の自由です。FigmaやAfter Effectsのどの機能を使って再現するかも、エンジニアがどんな変数名でコードを書くかも、それぞれの現場のやりやすさが一番です。
私たちが提案したいのは「厳しい縛り」ではなく、「日本の伝統美をデジタル画面で活かすための、ひとつの美しい道標」です。自分が欲しくて作ったこの考え方が、同じように悩むクリエイターの表現を少しでも豊かにする助けになればと願っています。



